本年度は、一昨年度の実験結果により明らかになった設計上の不具合を改善して、昨年度、再設計・製作したデブリシミュレータの二次試作機にて実験を実施した。また、炭素粒子供給装置についても振動による炭素粒子の漏れ対策としてピエゾ素子を用いた装置を(今年度の研究費にて)製作した。実験としては、ヒータ加熱による電子放出特性実験、そして、炭素粒子の加速観測実験を実施した。電子放出特性については、実験装置の制約(ガラス容器の耐熱、電源容量)のため、理論値を達成できなかったが、電子衝撃による炭素粒子の帯電及びそれに伴って加速が可能となり、炭素粒子の加速のようすを確認することができた。この方式での大型固体粒子のイオン化、加速は前例がないので、予想以上に帯電、加速は難しく、また、特に今年度は真空ポンプの不具合、ガラス容器の破損等の事故が相次いだため(今年度の研究費の多くはこの対応に使用したことになります)、最終的には、当初予定していたテザーへの損傷観察実験データの取得までは至らなかったが、粒子加速が可能なことを確認できたことは、この方式のデブリシミュレータへの応用の可能性を初めて示したものとして大きな成果があったと考えられる。なお、この二次試作機の設計及び実験結果については後述の宇宙輸送シンポジウムにて発表を行った。
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