研究概要 |
自然界の硫黄循環に関わる微生物を利用した硫化鉱物処理システムの開発をめざし、次の諸点を明らかにした。 1. 硫化鉱物からの有価金属の微生物浸出(バイオリーチング) 好酸性・好熱性細菌Acidianus brierleyilによる高品位精鉱(黄鉄鉱、閃亜鉛鉱、黄銅鉱)の浸出実験(65℃、pH1.2)を行い、回分反応器での浸出速度データを解析し、各種鉱物に対する吸着菌の比増殖速度と菌体収率を求めた。低品位鉱(17.8wt%Fe,48.3wt%SiO_2)からの黄鉄鉱の浸出速度は、脈石SiO_2(シリカ)の存在によって影響されずに、高品位精鉱の浸出実験から求められた増殖パラメータ値を用いた計算結果と一致することが明らかになった。さらに、回分反応器モデルを拡張し、直列連続槽でのバイオリーチングのシュミレーションを行い、硫化鉱物の浸出挙動に及ぼす希釈率(スラリー排出速度/反応器体積)、反応器連結数、固液向流・並流操作の影響を定量的に把握した。 2. 浸出残液からの元素硫黄の回収 硫酸イオン→硫化水素→元素硫黄の変換のうちで、光合成硫黄菌Chlorobium limicolaによる硫化水素から元素硫黄への光バイオ変換に着目した。C.limicolaの連続培養実験(23℃、pH6.5)を嫌気条件下で行った結果、比増殖速度に及ぼす液相H_2S濃度の影響はモノー式により説明できることがわかった。また、光強度2600〜1600lxの範囲内で比増殖速度はほぼ一定値を示したが、光強度が700lxから10lxに低下するに伴って比増殖速度も半減した。さらに、光源に近赤外LED(ピーク波長735nm)を用いて測定された比増殖速度は、白色蛍光灯(ピーク波長580nm付近)の場合よりも増大したことから、C.limicolaの増殖に有効な波長帯が存在することが示唆された。以上の知見に基づくシュミレーションから、連続槽型反応器でのH_2Sのバイオ転換速度に及ぼす操作因子(供給液H_2S濃度、通液速度、光強度)の影響を広範な操作条件下で明らかにした。
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