本研究では、低コスト・低環境負荷型の硫化鉱物処理システムの開発めざし、自然界の硫黄環境をヒントにした各種硫化鉱物(Zns、CuFeS_2)のバイオリーチングとそのダウンストロームプロセス(有価金属の回収、浸出液の後処理)について検討した。具体的には、1)好熱性・好酸性細菌による硫化鉱物の浸出、2)天然高分子アルギン酸のゲル粒子による浸出液からの有価金属の回収、3)硫酸還元細菌による浸出残液中の硫酸イオンの硫化水素への転換、4)光合成硫黄細菌による硫化水素の元素硫黄への転換、の各単位操作を行う生物反応装置と分離装置を連結したシステムを提案した。回分反応器における硫化鉱物(37-53mm)のバイオリーチングでは、中温性細菌Thiobaciilus ferrooxidansよりも浸出能力の優れている好熱性細菌Acidianus brierleyiを利用しても、80%以上の高浸出率を達成するには一週間程度の操作時間が必要であった。酸性溶液中の有価金属(亜鉛)は、アルギン酸ゲルによって効率よく捕集され、回分装置での収着平衡は1時間以内に達成される。またゲル粒子からの有価金属の溶離は、希薄な硫酸水溶液(pH1.0)を使用しることで20分以内に完了した。浸出残液中の硫酸イオンのバイオ転換では、硫酸還元細菌としてDesulfovibrio desulfuricansまたはDesulfovibrio vulgarisを利用すれば、1日程度の回分培養によって浸出液中の硫酸イオンを硫化水素に転換される。さらに、光合成硫黄細菌Prosthecochloris aestuariiによる硫化水素の元素硫黄への転換速度が、硫黄還元細菌による硫化水素の生成速度に比べて約10倍大きいことから、浸出液からの元素硫黄の回収は比較的速く実施できることがわかった。以上の各微生物反応操作、分離操作に関する知見を総合的に判断した結果、硫化鉱物のバイオリーチングがそのダウンストリームプロセスよりも著しく遅いプロセスであり、システム全体としての処理速度の律速段階であることが明らかになった。
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