含鉄坑廃水の最適中和法として、本研究ではマグネタイト沈殿を生成する方法を最適法と考え、新しい21世紀の抗廃水処理法として提案するものである。この方法は従来の方法である廃水中の鉄を全て3価の鉄に酸化するプロセスを省略し、脱水性の著しく悪い水酸化鉄の殿物を生成する代わりに脱水性が良好なマグネタイト殿物を生成する画期的なプロセスである。 水中においてマグネタイト生成を常温で行う操作には、共存イオン、設定pH、全鉄濃度および溶存酸素濃度などの影響を受ける。本研究では、主としてアルミニウムイオンおよび硅酸イオンを共存させた硫酸第一鉄を人口抗廃水として用いそれらのマグネタイト生成に及ぼす影響を検討した。アルミニウムイオンの鉄に対する共存比が増大するに従い、生成殿物の結晶性が低下したpHの設定調整により軽減させることができた。硅酸イオンが共存した場合、結晶性の低下した非晶質の殿物が生成し、殿物の安定容積も増大した。このような場合、試料液中ぼ全鉄に対する3価鉄の割合を約40%にすることにより結晶性マグネタイトの生成が可能となった。 殿物繰り返し法におけるこれらイオンの影響については、生成殿物の殿物濃度は繰り返し回数とともに直線的に増大し、結晶性のマグネタイトが生成した。しかしこれらイオンの全鉄に対する共存比が増大するに従い、殿物繰り返し濃度に上昇率も低下することがわかった。 本研究結果を実際の抗廃水に適用すために、模擬廃水に対する試験をおこなった。小真木鉱山疑似廃水に対しては、従来法に比較して約4倍の殿物濃度を有する沈殿を得ることができた。殿物繰り返し法についても従来法の約2.4倍の殿物濃度上昇率を示した。尾去沢鉱山模擬破水に対しては、従来法に比較して殿物濃度の低い沈殿が生成した。生成沈殿の結晶性は低く僅かにマグネタイトのX線回析線が認められる程度であったが、殿物繰り返し法を適用することにより、殿物濃度は従来法と比較して1.6倍の増加率を示した。 以上のことから、最適中和法としてマグネタイト殿物繰り返し法は、全ての抗廃水に適用するのではなく、廃水の種類によっては著しく効果のある抗廃水処理法であることが確認された。今後、我が国の抗廃水に適用し、次いで全世界に拡大したいと考えている。
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