コムギのWx遺伝子と量的遺伝子座の連鎖分析

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10660002
• 研究機関: 帯広畜産大学
• 研究代表者: 三浦 秀穂 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教授 (10173981)
• キーワード: 植物育種学 / コムギ / アミロース合成 / QTL分析 / RFLPマーカー

研究概要

アミロース合成能力が最も高いWx-B1a遺伝子が座乗する4A染色体をnull遺伝子の染色体で置換するとアミロースの現象は約2%であった。これはWx-B1座を不活性にしたときの過去の結果とよく一致した。アミロース含量に対する染色体置換の効果はWx座の効果が大きいことが確認できた。さらに、Chinese Spring(CS)とCS(Kanto107 4A)のF1をもとに育成した98系統の4A染色体組み換え置換系統のうちWx-B1b遺伝子をもつ51系統の間にはWx座とは独立な約2%の変異があった。10マーカーからなる4A染色体の遺伝的連鎖地図を構築しQTL分析を行ったところ、動原体近傍の短腕上にアミロース含量に影響する遺伝子座のあることが初めてわかった。
栽培や生産性に関わる量的形質については、CSとの比較で4A染色体置換系統CS(Kanto107 4A)は出穂日が約3日早まったほか、草丈は8cm以上低くなり、収量形質にも差が見られた。4A染色体上にそれらのQTLが存在することが判った。98系統の圃場試験での量的形質のデータをもとに分析を行った結果、出穂日と草丈のQTLはWx-B1の近傍にあること、収量形質のQTLは短腕上のRFLPマーカーと連鎖していることがわかった。
Wx-B1座は小麦粉の糊化特性に対しても他面効果を持ち、Wx-B1タンパク質の欠如によって最高粘度とブレークダウンが向上した。さらに短腕上に効果の小さなQTLが座乗し、Kanto107 4A染色体由来のQTLが最高粘度とブレークダウンを高める働きを持っていた。

研究成果

• [文献書誌] Watanabe,N.: "Variation for apparent amylose content of endosperm starch in Triticum durum and Aegilops squarrosa" Euphytica. 101. 283-286 (1998)
• [文献書誌] Araki,E.: "Genetic analysis of the amylose synthesis gene Wx-Bl and QTL affecting agronomic traits on chromosome 4A of wheat" Proc.9th int Wheat Genet Symp.2. 144-146 (1998)
• [文献書誌] Miura,H.: "Production of Wx-protein deficient lines in wheat cv.Chinese Spring" Proc.9th int Wheat Genet Symp.4. 208-210 (1998)
• [文献書誌] Watanabe,N.: "Diversity of amylose content in Triticum durum and Aegilops tauschii" Proc.9th int Wheat Genet Symp.4. 291-293 (1998)
• [文献書誌] Araki,E.: "Variation for amylose content in wheat cultivars carrying different null alleles at the Wx loci" Res.Bull.Obihiro Univ.21. 9-15 (1998)