1. ABAによる小胞子由来胚の乾燥耐性獲得の機構解明を目的として、ナタネ及びハクサイの小胞子由来胚を用い、胚の乾燥耐性に関与していることが推察されているLea遺伝子の経時的発現ならびに乾燥胚を用い内部形態観察及びLea遺伝子の発現の局在性を調査した。ナタネ、ハクサイともABA処理12時間後にLea遺伝子(ME-1eaN4)の翻訳産物の発現が見られ、24-48時間後に一定した発現量となった。組織学的観察から乾燥耐性胚においてはデンプン及び脂質の細胞内での蓄積が観察され、組織構造が維持されていた。一方、感受性胚では細胞、組織の崩壊と見られるデンプン、脂質の胚組織全体への散在が見られた。in situでの発現観察から、Lea遺伝子(ME-1eaN4)のmRNA及びその翻訳産物は、乾燥耐性胚においてのみ発現がみられることが明らかとなった。mRNAは頂端分裂組織や前形成層で強い発現がみられ、タンパク質は細胞質に局在し、組織全体の細胞に見られ、特に最外層において多く蓄積していることから、乾燥によるダメージから細胞や胚を構造的あるいは生理的に保護し、細胞構造の安定化の役割を担う機能を持つことが推察された。 2. Lea遺伝子が乾燥耐性遺伝子であるかどうかを解析するために、高発現プロモーターにMe-1eaN4をつないだキメラ遺伝子をタバコとハクサイに導入した形質転換植物を現在作成している。タバコについては多数形質転換体ができており、今後MO及びM1世代の浸透圧耐性を解析する予定である。
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