1.ナタネの花粉由来乾燥耐性胚から単離したLea遺伝子ME-leaN4の乾燥耐性に対する関わりを明らかにするため、ナタネ、ハクサイの花粉由来胚及び種子胚を用いLea遺伝子およびその翻訳産物の発現の局在性を調査した。ME-leaN4遺伝子及び翻訳産物の発現は、乾燥耐性胚において見られ、乾燥耐性を持たない胚では見られなかった。 2.乾燥耐性胚と感受性胚を電子顕微鏡観察したところ、乾燥感受性胚は乾燥によって表皮や内部組織の崩壊が見られたのに対し、耐性胚は胚の組織構造が保持されていた。 3.恒常的発現プロモーターにME-leaN4をつないだキメラ遺伝子を導入した形質転換タバコM1植物について、Lea遺伝子の発現と浸透圧ストレス耐性を調査した。Leaが導入されていることを確認した形質転換体のほとんどで恒常的なLeaの発現が見られた。乾燥耐性に関しては、一部の個体について乾燥耐性が強まる傾向が見られたが、他では見られず明確な証拠を得ることはできなかった。NaCl耐性を見たところ、Lea遺伝子を導入した植物は1.0%NaCl処理で生育阻害が低下し、NaCl耐性を獲得していることが示唆された。 4.ME-LeaN4遺伝子のプロモーター領域の解析を行い、単離した323bpの塩基配列中に、ABRE(ABA response element)と思われる領域が2カ所存在することが明らかとなった。本プロモーターの発現制御機構を調査したところ、ABA、ソルビトール、NaCl処理で発現誘導されること、またABREと思われる領域に突然変異を入れたプロモーターはそれらの処理による発現誘導が低下することから、本領域がABREであることが確認された。
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