研究概要 |
タバコで報告された塩基配列をもとに,イネの葉緑体リボソームタンパク質L12をコードする2種の核遺伝子rpl12-1,rpl12-2をクローニングした.ノーザン解析の結果,これら2種の遺伝子はともに転写されていることが明らかとなった.rpl2-1とrpl12-2との間で予想されるアミノ酸配列を比較すると,トランジットペプチド領域よりも成熟タンパク質領域で高度に保存されていた.他の植物種とのトランジットペプチド領域の相同性をもとに,L12タンパク質の系統関係を調べたところ,イネのリボソームタンパク質L12のトランジットペプチドは単子葉植物と双子葉植物が分岐したあとに獲得され,その後双子葉植物と単子葉植物で独立に遺伝子の重複が起こったと考えられた. また、葉緑体リボソームタンパク質S9をコードする核遺伝子を,植物で初めてイネで単離した.この遺伝子物産が実際に葉緑体へ輸送されることを,この遺伝子のトランジットペプチド領域の下流に緑色蛍光タンパク質(GFP)遺伝子を結合し,融合タンパク質をイネの植物体で発現させることで確認した.さらに,この遺伝子のトランジットペプチド領域はイネのL12のトランジットペプチドと高い相同性を示すことがわかった.このことから,核に移行した葉緑体の遺伝子はその上流にあるトランジットペプチドを他の葉緑体タンパク質遺伝子と交換することによって,タンパク質発現を効率化し進化してきたことがわかった.
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