本研究はアポミクシスの機構を分子生物学レベル解明する目的とし、3か年の計画で実験を進められるものである。今年度は当初の計画に沿ってほぼスムーズに進むことができた。 (1)組織・細胞学的解析:子房をそれぞれのステージに分けてこれらの細胞を化学染色法によって解析し、細胞内の生化学的変化を調査し、明らかにした。それらの結果をとりまとめて論文投稿準備中である。 (2)分子生物学的解析:Differential Screeningによる子房の各時期に特異的発現する遺伝子をクローニングすることができた。それらの遺伝子の全塩基配列も解析することができた。さらにそれらの遺伝子をプローブとして子房の組織内での発現パターンをin situ hybridization法を用いて検出することができた。その結果、A2(アポスポリ一胚のう始原細胞出現時期)の前期では、シグナルが子房のほぼ全体に見られた。特に胚のう周辺、珠孔側そしてその上部の各部分はシグナルが強く発現している。また、A2の後期では、専ら胚のう内、特に生殖細胞で強く発現していることが確認できた。一方、対象区では、シグナルが認められなかった。以上の結果から、得ているASG遺伝子はアポスポリー胚のう始原細胞出現時期に特異的に発現しており、アポミクシス現象に深く関わっていると考えられる。これらの結果もとりまとめて論文投稿準備中である。 目下、それらの遺伝子を有性生殖植物に導入するため、その植物再生培養系も確立でき、トランスジェニック植物の作製に取り掛かっている。
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