本研究はアポミクシスの機構を分子生物学レベルで解析する目的とし、3か年の計画で実験を進めるものである。今年度は最終年度となったが、ほぼ予定の成果が得られた。 (1)組織・細胞学的解析:アポミクシス系統の受精過程をin vitro人工受精によって明らかにしようとするための初歩的実験として、開花当日のギニアグラスの花を酵素処理して単離したプロトプラストをモニター画面に映し出し、その内部の詳細を調査した。最後に胚嚢分析の結果と酵素処理の結果とを比較し、サイズと細胞質から胚嚢構成生殖細胞であると判断できた。いま、人工受精実験を始めている。これらの結果は国内の学会ですでに発表して、いま、論文投稿中。(2)分子生物学的解析:Differential screening法によってアポスポリー性胚嚢始原細胞の出現時期に特異的に発現する遺伝子ASG-2を新たに得た。それの全塩基配列の解析では、ASG-1と核酸レベルで87%の類似性を示し、アミノ酸配列を用いたホモロジーザーチの結果、胚発育と種子発育に関与する遺伝子と30-40%の類似性を示した。それをプローブとしてin situ hybridizationを実施した結果、AICの細胞内で強いシグナルが、胚嚢内の各細胞にもシグナルがそれぞれ検出された。 遺伝子導入実験を行なうため、ギニアグラスの子房と葉鞘、バヒアグラスの葉鞘からそれぞれembryogenicカルスを経由して植物体再生系を確立することができた。走査型電子顕微鏡を用いてembryogenicカルスを観察した結果、小鱗片、胚盤、子葉鞘、幼芽といったsomatic embryoの構造を確認したのでembryogenicカルスであると判断できた。これらの結果は論文として公表した。アグロバクテリウムを用いた遺伝子導入法を利用して、さまざまなステージのカルスにGUS遺伝子の入ったアグロバクテリウムを感染してみたが、いまの時点では、感染したカルスはまだ見つからない。大腸菌の濃度の調整やベクターの再構築などを工夫しながら検討中。
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