研究概要 |
本研究は,農作物に発生する不可視障害発生機作の解明のため,二酸化硫黄が水稲の光合成速度に及ぼす影響の適正な判断時期と方法を検討したものである. 実験は,三重大学生物資源学部実験圃場において,水稲品種コシヒカリを1998年4月11日に播種し,基肥として粒状化成肥料(10:6:8)7.0gを混和した水田土壌を充填した5000分の1アールワグネルポットに,1ポット1本植えで同年5月5日に移植を行った.処理は個体用および個葉用同化箱を用いて,光合成速度の測定と二酸化硫黄暴露を同時に行った.供試材料は,あらかじめ同化箱内で順化し,その後,二酸化硫黄濃度1ppmで15分間暴露を行い,引き続いて同化箱内を清浄な空気で60分間置換した.この間の光合成速度を測定し,阻害率,回復率を算出して,二酸化硫黄による光合成速度に及ぼす影響の指標とした. 結果は次のとおりである.1)処理時間帯を8時から10時,12時から14時,16時から18時に区別し処理を行ったところ,処理開始時の光合成速度には時間帯による有意差はなかった.阻害率は,8時から10時と12時から14時との間に有意差はみられず,16時から18時は前2者と比較して有意に大きかった.回復率はそれぞれの処理時間帯の間に有意差はみられなかった.2)個体用同化箱に導入する流量を毎分35lと70lの場合について比較したところ,両者の処理時光合成速度,阻害率,回復率のいずれにも有意差は認められなかった.3)13葉齢の個体を用いて,個体全体と個葉を処理の対象として比較した.処理開始時の光合成速度は,個葉は個体より有意に高かったが,阻害率は両者の間に有意差がみられなかった.回復率は個葉が73.4%で個体より有意に小さかった.光合成能力や品種間差の検定など不可視障害を詳細に検討する場合には,個体より個葉を対象とする方が精度的に高いことを明らかにした.
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