まず、前年度調査したアーバンフリンジにおける道路景観写真の心理評価実験では、「好ましさ」と「田園性」の評価に関する要因を明らかにした。すなわち写真に写る空、山、草地、裸地、耕地、建物、看板等の比率が有意に影響しており、重回帰分析による評価モデルでは、「好まし」さでは耕地、山がプラスに、道路、建物、看板等がマイナスに、また、「田園性」では山、草地がプラスに、建物、看板等がマイナスにそれぞれ大きな回帰係数を示した。さらに、道路景観のビデオテープによる評価実験を継続中である。次に、札幌市における平地系と丘陵地系における景観写真の評価実験では、両地域とも「緑の多さ」が評価に関連し、平地系では「すっきり」「開放的」、丘陵地系では「自然が豊か」、「まとまり」がイメージの特徴となっていた。SD法によるイメージ分析では「快適性」「開放性」「特徴性」「整然性」の4因子による構造が明らかにされた。 一方、景観構造の基本となる都市近郊の土地利用に関しては、札幌圏の北東部および南東部を事例に、地形図、空中写真などにより土地利用の変遷を解析し、市街地の拡大傾向、減反政策などによる水田から畑への転換の状況、またそれらに関する自然立地的、社会的要因を明らかにした。景観的には、特に低湿地で開発されてきた水田が畑地へ転換する適地利用の問題や転換が景観単位面積を減少させ細分化が進む問題などが指摘された。また、樹林地では全体的な面積変化は少ないものの、一部では消滅と造成がともに行われており、構造的な変化が見られた。今後はこれらの土地利用変化と景観評価の関係を詳しく解析する予定である。
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