本年度は、まず、札幌市南部で市街化が進み、農地と住宅地が混在する地域を事例として農地景観の評価と適合性に関する住民意識調査を行った(有効数289名)。その結果、農地に対する嗜好性は自然性と関連が強く、農地の地覆状態や隣接する土地利用、背景と強い関連が見られ、畑は評価を高めるが荒れ地は低め、住宅や資材置き場の存在も評価を低めていることがわかった。一方、背景の樹林は評価を高めていた。これに関しては、屋敷林の有無、背景の樹林の有無によって農地景観評価がどのように変わるかを写真を用いた心理実験によって確かめた。その結果でも屋敷林と背景の樹林の効果が明確であった。従って、農地と市街地の境界の緩衝帯としての樹林地が景観的な適合性を高める上で重要と考えられた。また、前年度から継続し道路からの景観評価に関する心理的実験を行い、関連する要因を解析した。 次に、農地保全に関して、官庁や民間コンサルタントなどで緑に関する計画や都市計画に携わっている専門家が、都市の多くの緑に関する指標の中で農地をどのように認識しているかをアンケートにより調査した(有効数53名)。その結果は、農地保全の必要性はかなり高く認識されているものの、指標としての評価はあまり高くなかった。農地の緑地的機能と農地形態との関係を明確にし計画指標として農地を取り上げることが必要であると指摘した。また、これまでの研究のまとめを行った。
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