大都市圏において1960年代以降の急激な都市化は無秩序なスプロール現象を生じ、多くの農地を喪失させ自然環境や景観の悪化をもたらした。本研究ではまず、札幌都市圏を主要な事例調査地として、土地利用の状況と変動を把握した。その結果市街地の拡大傾向、減反政策などによる水田から畑地への転換、またそれらに関する自然的、社会的要因を明らかにし、農地の細分化と景観単位面積縮小化の問題を指摘した。次に、景観評価に関しては写真を用いた「好ましさ」「田園性」などについて数種の心理的評価実験を行い、それらを規定する要因を示した。またSD法によるイメージ分析では「空間性」「特徴性」「整然性」の因子を見いだし、屋敷林や農地と市街地の緩衝帯としての樹林の効果について検討した。また、景観の適合性や道路景観でのシークエンス景観の評価特性についても検討した。一方、アーバンフリンジにおける住民意識調査の結果、農地に対する認識や嗜好性を把握し、農地のイメージには総合評価性、田園性、特徴性があることを見いだし、田園性や総合評価性が低い層、総合評価性が高く特徴性が低い層、総合評価性及び特徴性が高い層、総合評価性が低く田園性が高い層の4グループに分けられ、これらは農地に関する意識構造と密接に係わっていることを示した。この結果を基に、今後の農地の保全・整備に際してそれぞれの層に対する計画的対応の必要性を指摘した。さらに専門家を対象とした調査から、都市において農地の緑地的機能と農地形態との関係を明確にし計画指標として農地を取り上げる必要性を指摘し、市民や農業者の計画への主体的参加とより総合的な計画制度の必要性についても触れた。
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