研究概要 |
リンゴ,セイヨウナシ,オウトウおよびカキ各1品種の成木を用い,果実肥大最盛期における2年生側枝間の^<13>C光合成産物の一次転流(施与後約44〜72時間)の実態を調査した. 1. 同一の3年生側枝上において,^<13>CO_2を十分施与した1本の2年生側枝から周辺全側枝への^<13>Cの合計分配率の範囲は,リンゴでは約0.5〜約16%,セイヨウナシでは約5〜約29%,オウトウでは約2.5〜27%,およびカキでは0〜約31%であり,全体としての平均は1割前後であった.これは前報(山本ら,1999.園芸学会雑誌印刷中)の4ないし3年生側枝の場合より高かった.施与側枝の位置の違いおよび周辺側枝への遮光処理の影響は明らかではなかった. 2. 周辺の個々の側枝内の果実への^<13>C分配率の要因解析を行ったところ,重相関分析による寄与率はセイヨウナシで約83%,リンゴで約55%,オウトウで約41%であり,取り込み変数(変数増減法による)は樹種により異なった.また,周辺の個々の側枝への^<13>C分配率と果実への^<13>C分配率との間の相関はカキを除く3者で極めて高かった.カキの側枝間転流には果実よりも発育枝葉の影響が無視できないものと考えられた. 3. 以上の結果,果実肥大最盛期の2年生側枝の炭素収支は総じて半閉鎖経済的様相を呈し,平均1割程度の,多くて約2,3割の光合成産物が他の側枝に転流することが推察できた. 次年度の計画:リンゴを中心に,数年生側枝単位の結果部の葉群の光環境の調査方法を検討するとともに,結果部の光環境の違いが果実肥大,品質および着色に及ぼす影響を調査し,光合成産物の側枝間一次転流の性格を考慮した合理的な整枝剪定および光環境改善の方法を明らかにしたい。
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