研究概要 |
1. 雑種の幼胚培養系の確立 ヤブツバキとキンカチャとの交雑胚は発育の過程で退化して稔実種子が得られないため,交配日から一定期間ごとに幼胚を摘出してin vitroで培養したところ,交配後100日前後の胚を用いることによって,交雑胚の発育が可能であった.幼胚の発育は,BA1mg/l,YE1g/l,ショ糖40g/lを添加した修正1/2MS培地を用いた暗条件培養が有効であり,胚からの不定胚の誘導にはGA_3lmg/lを添加したMS培地が適すると思われた. 2. 雑種性の早期検定法の確立 過去に育成されたヤブツバキとキンカチャとの交配実生を材料に用い,形態及びPCR法から雑種性の早期検定法を検討し,葉の形態と3種のプライマーによる分析から雑種性の早期検定が可能となった. 3. 交雑胚からの複二倍体の育成 不定胚形成期の幼胚を用い,in vitroにおいてコルヒチン処理を行ったところ,形態特性から倍加あるいはキメラ化した可能性の高い変異シュートが多数得られた.現段階では染色体数の調査まで至らないが,これらの材料を節ごとに分割増殖を行い,発根処理により染色体数を確定し,複二倍体個体の育成をはかる予定である. 4. ツバキ属キンカチャ節の系統分類 黄色い花のツバキ品質育成のために用いられているツバキ属のキンカチャ節の種は分類学上の位置づけが不明確である.中国南部やベトナム北部の現地調査をもとに分類基準の明確化と種の特定を行ってきたが,その過程でベトナム産の3種を新種として発表した.
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