カキの生理落果では、果実への同化産物の転流量の減少が離脱の要因であることが認められている。離脱過程は“誘導段階"→“決定段階"→“実行段階"と考えられ、それらを制御している要因が明らかとなれば、発現遺伝子の推定が容易となる。そこで、カキ果実の離脱過程に及ぼす要因を明らかにしようとした。 “平核無"成木を供試した。満開3週間後に果実を採取し、15、20、35℃の温度条件と果実を水中に沈めた無気条件における離脱率を調査した。さらに、満開6、9、12週間後に果実を採取し、35℃と20℃における離脱率を調査した。満開4週間後に、樹上果実に果梗環状剥皮を行うとともに採取果実を室温に静置し、離脱率とエチレン発生量を調査した。満開5週間後の採取果実は、20℃、5℃および20℃で24、48時間処理後5℃に移す区を設け、離脱率およびエチレン発生量と呼吸量を調査した。 樹上環状剥皮果実と採取果実の離脱はほぼ同様に進行し、いずれも離脱前にエチレン発生量が増加した。採取果実は温度が高いほど離脱までの時間が短く、水中処理では離脱しなかった。果重が大きいほど離脱までの時間が長く、両者に正の相関が認められた。果実の離脱は5℃では認められず、20℃処理と20℃→5℃処理で離脱がみられた。20℃処理では離脱前にエチレン発生量と呼吸量の増加がみられ、20℃→5℃処理の離脱果実とは異なった。以上より、採取果実の離脱過程は樹上果実と同様であり、離脱過程の進行は有気条件が必須と考えたれた。果実への同化産物の転流量の減少が離脱の“誘導段階"であり、“決定段階"までの期間は温度条件と果実の大きさが、“実行段階"の長さは温度条件が関与していることが示唆された。また、“実行段階"において、果実のエチレン発生量および呼吸量は間接的に関与していると考えられた。
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