カンキツの染色体地図作成には、染色体の識別に基づく染色体構成を明らかにする必要がある。しかし、染色体識別に有効な比較的長い染色体像では、2次狭窄部分が伸長するため、染色体数の特定が困難となる。そこで、蛍光染色法を用いて染色体数の特定を行い、数種類のカンキツの染色体構成を明らかにした。 ‘土佐文旦'、‘ワシントンネーブル'オレンジ、カラタチ、‘水晶文旦'および‘南柑20号'ウンシュウミカンの成木から幼葉を採取し、酵素解離法により染色体標本を作製した。標本は、(1)2%ギムザ、(2)50μg/mlキナクリンマスタード/ヘキスト33258(QM/H)、(3)0.12mg/mlクロモマイシンA3(CMA)で順に染色し、染色パターンを比較・調査して、染色体構成を決定した。 QM/H染色は動原体部分の染色が暗く、動原体の位置の確認には有効であった。CMA染色では、A)染色体の両腕端部と動原体付近に蛍光の強いCMA(+)、B)一方の端部と動原体付近にCMA(+)、C)両端にCMA(+)、D)一方の端部にCMA(+)の領域をもつ、E)CMA(+)の領域を持たない、の5種類のバンドパターンが観察された。CMAバンドパターンに基づき、染色体構成は‘土佐文旦'が1A+1B+5C+2D+9E、‘ワシントンネーブル'が2B+2C+7D+7E、カラタチが4B+8D+6E、‘水晶文旦'が3A+3C+3D+9E、 ‘南柑20号'が1A+1C+8D+8Eであることが明らかとなった。この染色体構成に基づき、染色体数の算定が困難な核板においても染色体数を2n=18と特定することが可能となった。また、算定困難な染色体はほとんどが動原体付近にCMA(+)の領域を持っていた。以上より、蛍光染色により染色体数の特定が可能となり、5種類のカンキツではCMA染色に基づく染色体構成が明らかとなった。
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