カンキツの染色体地図作成には、染色体の識別に基づく染色体構成を明らかにする必要がある。昨年度にはCMA染色は染色体の識別に有効なことを認め、5種類のカンキツでCMA染色に基づく染色体構成を明らかにした。しかし、同一のCMAバンドパターンをもつ染色体間の識別は困難である。そこで、これらの識別に有効なGISH(Genomic in situ Hybridization)法を検討した。 '南柑20号'ウンシュウミカン、'土佐文旦'、'ワシントンネーブル'オレンジ、ブッシュカンの葉からDNAを抽出し、ニックトランスレーション法によりビオチン(Bio)またはディゴキシゲニン(Dig)標識した。Bio標識した'土佐文旦'DNAプローブ(以下、Bio'土佐文旦')10μlを単用で'南柑20号'染色体標本にハイブリダイズすると、シグナルはほぼ同様であり、染色体の形態も不明瞭であった。Bio'南柑20号'10μl+Dig'土佐文旦'5、2.5、1μlおよびBio'土佐文旦'10μl+Dig'南柑20号'5、2.5、1μlの組み合わせでは、Bio'南柑20号'10μl+Dig'土佐文旦'1μlで色調の異なる特異的なシグナルが検出されたが、染色体の形態は不明瞭であった。Bio'土佐文旦'10μl+Dig'南柑20号'5μlでは色調の強い特異的なシグナルが検出され、染色体の形態は明瞭であり、染色体の識別に有効であった。Bioブッシュカン10μl+Dig'南柑20号'5μl、Bio'ワシントンネーブル'10μl+Dig'南柑20号'5μlおよびBioブッシュカン10μl+Dig'土佐文旦'5μlについて検討すると特異的なシグナルは検出されるが、染色体の識別にはやや劣った。Bio'土佐文旦'10μl+Dig'南柑20号'5μlでは、CMA染色による'南柑20号'ウンシュウミカンの8本のD型染色体は、シグナルの色調と大きさから黄大、黄小、橙大、橙小、赤小の5グループに分類することができ、GISH法の有効性が認められた。
|