カンキツの染色体地図作成には、母樹の栄養器官を材料として比較的長い染色体の標本を作製し、それぞれの染色体を明瞭に識別できなくてはいけない。そこで、本研究では幼葉を用いて比較的長い染色体の標本作製技術を確立するとともに、CMAバンドパターンに基づく数種カンキツの染色体構成を明らかにし、同一のCMAバンドパターンをもつ染色体の識別はGISH法により行なった。 1.1.染色体標本作製では、3〜5mmの幼葉を用い、0.3%セルラーゼ+0.2%ペクトリアーゼで37℃、120〜180分処理後、固定液で洗浄して懸濁細胞を滴下する方法により、比較的長い染色体像が多く得られた。 2.CMA染色によってカンキツ染色体は5種類のバンドパターンが得られた。すなわち、CMA(+)領域が染色体の両端と動原体付近にあるもの(A型)、一方の端部と動原体付近にあるもの(B型)、両端にあるもの(C型)、一方の端部にあるもの(D型)、CMA(+)領域がないもの(E型)であった。 3.CMAバンドパターンによる染色体構成は、ブッシュカンが2B+8D+8E、コウジが1C+8D+9E、ウンシュウミカンが1A+1C+8D+8E、'ワシントン'ネーブルオレンジが2B+2C+7D+7E、'ダンカン'グレープフルーツが2A+1B+1C+6D+8D、'土佐文旦'が1A+1B+5C+2D+9E、'水晶文旦'が3A+3C+3D+9E、'晩王柑'が2A+1B+3C+3D+9E、'晩白柚'が1A+2B+2C+4D+8E+1A or B、カラタチが4B+8D+6Eであることが明らかとなった。 4.'南柑20号'ウンシュウミカン染色体にDig標識した'南柑20号'DNAとBio標識した'土佐文旦'DNAでGISHを行い、坑DigローダミンとアビジンFITCで蛍光染色すると、8本のD型染色体は、黄色の大きなシグナルをもつ1本、黄色の小さなシグナルをもつ1本、橙色の大きなシグナルをもつ3本、橙色の小さなシグナルをもつ1本、赤色の小さなシグナルをもつ2本の染色体に識別できた。また、8本のE型染色体はギムザ染色体により長い2本、中程度の2本、短い4本の染色体に識別できた。
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