研究概要 |
平成10年度の計画(1)(2)(3)に・ついて:現在までの調査研究の結果、「文化的景観」概念の導入は「世界遺産条約」以百の国際間及び欧州間の取り決めにおいて、大きくは以下2系統より求められた課題に対する成果であるどの阪説を立てるに至っている。i)「ラムサール条約」等にみられる、国家単位を超えた環境保全に対する連携的取り組みの拡大。 )宗教・慣習等の無形な文化に対する評価の必要性が増し、それらを育む風上全体を「景観」として捉えて保護の対象とする取り組みの発生,計画(4)について:我が国の歴史的庭園の保存実態調査を行っている。江戸期の地誌・切絵図等の文献及び江戸期以降の地図情報と文献調査によって、東京都区部に40箇所の旧大名庭園(部分)を抽出、所有形態の差異等によって類型し、残存状況の調査から保護制度の評価手法を検討中である。計画(5)について:文献調査により、イタリアの歴史的庭園は1939年制定の文化財の保護法と自然美の保護法の2法によって法定財とされ、我が国の場合と大きく異なる点として、これらの保護法は概念的位置付けが都市計画法の上位にあり、よって運用次第で広域的な建築行為や開発行為の規制を可能としていることを明らかにした。法定財物件数の推移(1902〜'91年)を併せて考察した結果、イタリアの歴史的庭園の保護は、i)今世紀初頭の自然美保護思潮の影響下に具体化、ii)'70年代からは環境財という概念が導入され強く影響を受けており、iii)'80年代より具体的な保存・修復の手法等に関する論議が深まる。これはICOMOS-ILFAのフィレンツェ憲章の制定が起因していることを明らかにした。また、イタリアの歴史的庭園に関する保護法制の進展には、'50年代後半からの市民運動や、都市計画の拡充に重要な相関関係があることも指摘し論考した。
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