研究概要 |
国際社会における日本庭園の評価について、特に昭和後期(1945年以降)における日本庭園の欧米における一種のブームを確認し、その際に最も顕著に評価された日本庭園の芸術的形式を見出した。それが、枯山水形式である。例えば、このタイプの庭園は今世紀初頭欧米に作庭され、既に存在した築山林泉形式の日本庭園に、1950年代以降数多く付け加えられた。枯山水庭園の作庭は、白砂と石組という造形がその骨格となることから、造園家のみならず、造形感覚の優れた建築家や彫刻家らも庭園創作に加わり、欧米人も石と砂を用い造形的なセンスをもって作庭することができること、また作庭後の維持管理も容易なことから枯山水の流行があった。この枯山水の庭園形式は、特に世界の建築様式としてのモダン建築に容易にマッチさせることができ、そのことが枯山水の評価を高め、ひいては昭和後期以降の日本庭園の主要なイメージを形成していた。こうした枯山水が国際的に評価されていく過程については『ランドスケープ・デザインにおける「枯山水」の考察』としてまとめ、日本造園学会誌『ランドスケープ研究』(V0l.61,No.5,1998.pp.413-416)に論文として発表。また、1998年9月に国際造園家会議(IFLA)が開催した国際シンポジウム“Art and Landscape"(セントラル・リージョン、アテネ大会)にて発表した。なお、アメリカにおける日本庭園の作庭から維持管理、運営管理を含めた実態の把握を、アメリカのポートランド市内にあるワシントンパークの日本庭園を事例として調査し、共同研究者(土沼隆雄)と共著にて日本建築学会計画系論文集に掲載予定である。
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