本研究課題で得られた研究成果の概要は以下のとおりである (1)パーティクルガンを用いてpCLSFを、ACLSVの宿主植物であるNicotiana occidentalis およびChenopodium quinoaに効率的に接種できる条件を検討し、100%の感染を得ることができた。 (2)pCLSF内の移行タンパク質(MP)遺伝子および外被タンパク質(CP)遺伝子とGFP遺伝子を交換したクロ―ン(pCLSFΔMP-GFPおよびpCLSFΔCP-GFP)を構築し、パーティクルガンで宿主植物の葉に専入した。ウイルスの増殖と細胞間移行を蛍光頭微鏡を用いて経時的に観察した結果、これらのクロ―ンを接種した葉では、単一細胞のみでGFPの蛍光が観察され、MPとCPの両遺伝子がACLSVの細胞間移行に必要であることが明らかになった。 (3)50KP-GFP遺伝子をパーティクルガン法でNicotiana occidentalisの表皮細胞に導入したところ、50KP-GFPの蛍光が一次発現細胞から周辺の細胞に時間とともに広がる様子が観察された。以上から、50KPそれ自体が細胞間移行能を持っていることが明らかになった。また50KP-GFPはプロトプラストの表面に管状構造が形成する能方を持っていることが明らかになった。 (4)p35S50KGFPを、ACLSVの感染性cDNAクロ―ン(pCLSF)の50KP遺伝子にストップコドンを導入したpCLStuStopと共にパーティクルガン法でN.occidentalisに接種し、ノーザンブロット分析した。その結果、pCLStuStopのみの接種ではゲノムRNAが検出されなかったのに対し、p35S50KGFPを同時に接種した場合にはゲノムRNAの増殖が確認された。以上から、50KP-GFPは50KP 本来の機能を維持し、ウイルスが細胞間移行するために必要な細胞間移行タンパク質として働くことが明らかになった。
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