研究概要 |
ヒエ属植物の種子休眠機構を雑草型と栽培型の交雑実験による手法と分子生物学的手法とを併用して明らかにすることを目的とした2年間の研究の初年度の概要である。 1. 種子休眠性に関与するmRNAの単離 タイヌビエとヒメタイヌビエの休眠種子、休眠覚醒種子および栽培ヒエの非休眠種子からフェノール法でmRNAを抽出し、Differential Display法で休眠種子にのみ特異的に発現しているmRNAを検索した。この結果、これら休眠種子の水浸初期に特異的に認められるDS-400,DS-700のcDNAが検出された。 これら2種のcDNAは休眠性を欠損した栽培ヒエには検出されなかった。また、Northern Blotting法によってDS-400とDS-700の発現を解析したところ、休眠覚醒種子でそれらの発現が100%阻害されているのではなく、休眠種子に比べてかなり量的に抑制されていることが明らかとなった。 クローニングされたDS-400とDS-700の塩基配列を解析から、DS-400は未知の転写因子、DS-700は酵素タンパク質であることが示唆された。 2. 栽培型と雑草型の交雑による休眠性の遺伝様式の解析 種子休眠性をもつ雑草型タイヌビエ(鹿児島県溝辺由来)と休眠性を遺伝的に欠損した栽培型タイヌビエ(中国雲南省由来)の正逆Fl種子をもとに、Fl,F2個体を自殖させた。F2個体上の種子(F3)の発芽率における個体頻度分布は、正逆交雑とも連続変異を示したが正規分布と異なり、発芽率の小さい方に大きく歪んでいた。100%の発芽率をもつ種子を生産するF2個体が正逆とも検定総個体数の1/16に近似されることから種子を休眠させる方向に働く2対の重要な遺伝子が存在すると考えられた。
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