ジカルボキシイミド(DCI)耐性機構と浸透圧調節機構の関連について解析するためにNeurosporaの浸透圧感受性os-1変異株を用いて研究をおこなった。os-1変異株は、その表現型からDCIに高度耐性を示すグループと浸透圧に高度感受性を示すグループに分類された。各変異株からos-1遺伝子(浸透圧センサー遺伝子)をクローニングし、その変異を同定した。DCIに高度耐性を示す変異株(NM233t)では、308番目のアミノ酸が終止コドンに変異していた。同変異部位は、浸透圧センサータンパク質のキナーゼドメインの上流に位置していることから、変異酵素は完全にその活性を失っていると考えられた。このことは、NM233t株がos-1遺伝子破壊株と同様の形質を示すことにより確認された。このことから、os-1遺伝子産物の活性がDCIの殺菌活性発現に必須であり、その失活がDCI高度耐性をもたらすことが明らかとなった。浸透圧高感受性株(M16)の変異は、625番目のアミノ酸LeuからProへの置換であった。糸状菌の浸透圧センサーは酵母等のものと異なり浸透圧センサー内に90アミノ酸からなる繰り返し配列をもっており、その機能は不明であった。M16株の変異はこの繰り返し配列内に位置していた。同繰り返し配列はコイルド-コイル構造を形成していると考えられているが、LeuからProへのアミノ置換はこの立体構造に大きな変化をもたらすと推定される。従って、この90アミノ酸繰り返し配列が浸透圧調節に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。
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