ジカルボキシイミド(DCI)耐性機構と浸透圧調節機構の関連について解析するために、Neurosporaの浸透圧感受性変異株、および新たに単離した浸透圧耐性復帰変異os-5/su(os-5)株を用いて研究をおこなった。浸透圧シグナル伝達系の構成因子のos変異が薬剤耐性を示し、耐性株では薬剤によるグリセロール異常蓄積が消失することから、DCIは浸透圧シグナル伝達系を攪乱していると考えられた。しかし、薬剤耐性と薬剤感受性は必ずしも相関しないことが判明し、os-1、os-2、os-4、os-5などから構成される情報伝達経路は、浸透圧のみではなく、糸状菌の形態形成にも関与している可能性が示唆された。またos-1(浸透圧センサー)変異株は、その表現型からDCI高度耐性株と浸透圧高度感受性株に分類された。DCIに高度耐性を示す変異株では、ORF上流に終止コドン、フレームシフト変異が見いだされ、変異酵素は完全にその活性を失っていると考えられた。このことから、os-1遺伝子産物の活性がDCIの殺菌活性発現に必須であり、その失活がDCI高度耐性をもたらすことが明らかとなった。一方、浸透圧高感受性株の変異は、いずれも90アミノ酸からなる繰り返し配列内のアミノ酸置換であった。この90アミノ酸の繰り返し配列は、糸状菌特異的な配列であり、その機能は不明であったが、本研究により、この繰り返し配列が浸透圧調節に重要な役割を果たしていることが明らかになった。これらの研究成果をもとに、今後植物病原菌における浸透圧情報伝達経路の役割と、圃場耐性、病原性との関連について解析をおこなう予定である。
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