研究概要 |
植物の重金属耐性は、ファイトケラチンの生成能力と関連していることが報告されている。本研究は、ニンジン培養細胞のCd耐性はCdの吸収抑制と活性酸素解毒系が関与していることを明らかにする。野生株(Cw)とcd耐性株(C_<cd>)を0〜160μMのCdCl_2を含む培地で0〜8日間培養し、新鮮物重量、細胞内のCd含量、低分子SH化合物、活性酸素解毒系の各種酵素活性及び抗酸化物質の含量を測定した。Cd無添加に対して40μMのCd処理は、野生株の生長を阻害したが、耐性株の成長は変化しなかった。耐性株は160μMのCd処理の場合にも若干の生育が認められた。Cd含量は、耐性株の方が野生株よりも明らかに低かった。グルタチオン(GSH)含量は、Cd処理に関わらず、耐性株の方が野生株より高かった。しかしSH低分子化合物は両株ともにCd添加することにより増加した。活性酸素解毒系酵素のうち、Cd処理によって増加したのはSOD活性であった:野生株は40〜80μMCdで1日目から増加したが、耐性株は80〜160μMCdで4日目から増加した。予備実験から、野生株と耐性株のSODが異なるアイソザイムパターンを示した。以上のことから、両株のCd耐性の違いはCd吸収量が主たる原因であり、またSOD活性も何らかの影響を持ったと考えられる。 またH202馴化株(C_<HP>)とMV馴化株(C_<MV>)はそれぞれのストレスに対してC_Wよりも耐性をもった。さらにC_<HP>、C_<MV>及びC_<Cd>は馴化に用いたストレス以外にも抵抗性をもった。C_<HP>はMV(89.2%)とCd(41.3%)に抵抗性を獲得した。C_<MV>はH_2O_2(58.5%)とCd(62.3%),またC_<Cd>はH_2O_2(54.8%)とMV(75.5%)に抵抗性を獲得した。このように、活性酸素の解毒システムは重金属解毒システムと関連があると思われる。
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