研究は、Cdに対する耐性度の違う2種類のニンジン培養細胞、野生株(CW)とCd耐性株(CCd1)を用いてCd耐性機構を明らかにすることを目的とした。80、160μMCd処理区でCWのCd含量は時間の経過によっで増加した反面、CCd1は減少した。両株をcd20、40、80μMCdを含む培地で1日間処理し、Cdなしの培地で4日間にわたって細胞と培地中のCd含量を測定した。CWでは20μMのCd処理の初期段階でのみCd排出が見られた反面、CCd1では全処理区で持続的にCdを排出した。CCd1はこのCdの排出力により細胞内の低いCd含量を保つことができ、その結果、Cd耐性に貢献していると考えられる。しかし、こうした強いCd排出力にも関わらずCCd1の細胞内には多量のCdが存在することが分かった。Cdストレスに対する活性酸素解毒機系のscorbate/glutathione cycle(AsA/GSH cycle)は両株間で以下のような異なる応答を示した。アスコルビン酸パーオキシダーゼはCWにおいて80μM Cdから、CCd1においては160μMCdで減少した。グルタチオンレダクターゼ活性は、CWではCd処理したとたんその活性が殆どなくなった反面、CCd1はCdによって増加した。また、AsAは両株ともCdによって減少するもののつねにCCd1が高いレベルを保った。これらの結果はCCd1のAsA/GSH cycleがCWよりはるかに強かったことを示しており、AsA/GSH cycleはCCd1のCd耐性に関連があることを示している。以上の結果より、新しいCd耐性機構が明らかになった。ニンジンのCd耐性機構はCd排出力と活性酸素解毒機構、特にAsA/GSH cycleが関係する。
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