マングローブのオヒルギ林が生育できる潮間帯に生育するオキナワアナジャコは、強還元性の下層土を地中深くから持ち揚げて高さ0.3〜2m程度の円錐台のシャコ塚を活発に造成する。シャコ塚はマングローブ湿地にパッチ状の潮汐の影響を受けない陸上環境を構築して、マングローブ林の土壌生物環境に大きな影響を及ぼす。強酸性のシャコ塚にはシダ植物のミミモチシダ、カニクサやテツオシダが優性である。 シャコ塚土壌に多い黄鉄鉱の酸性生成物である硫酸により起こされる土壌の強酸性化が、マングローブ林の硫黄循環に携わる土壌微生物相を検討した。黄鉄鉱FeS_2の硫酸H_2SO_4への酸化反応は、まず、中性のpH生育領域にある中性硫黄酸化細菌により開始され、硫酸生成によりpHは4程度に低くなると、次に、酸性硫黄酸化細菌による酸化反応が優勢になる。これら結果から、シャコ塚における黄鉄鉱の速やかな酸化は、従来の説である非生物的な空気酸化反応よりもむしろ、まず中性硫黄酸化細菌により黄鉄鉱の部分的な酸化反応が開始され、産生された硫酸により土壌のpHが低くなると、次に酸性硫黄酸化細菌による酸化反応が継続するために、シャコ塚土壌の黄鉄鉱の硫酸への速やかな酸化反応が可能であると示唆された。以上の調査・研究の結果を総括し、マングローブ林に棲むオキナワアナジャコの営巣活動によって構築されるシャコ塚が植生・土壌環境に及ぼす影響を総合的に考察した。
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