微生物には、哺乳動物や植物に見られないN-あるいはO-型糖鎖が存在する。が、その生物機能や生合成機構については解明されていない。本研究は、その新規なO-型糖鎖の解明ならびに5員環ガラクトース(以下、Galfと略す)がα型で結合する新規なN-型糖鎖の生合成に関する酵素(UDP-Galf合成酵素とGalf転移酵素)の解析を目的として行われ、本年度は以下に示す成果が得られた。 1)Aspergillus nigerのα-グルコシダーゼに存在するO-型糖鎖に関し、本年度は三糖類に焦点を絞って構造解析を行った。昨年度の部分精製画分からマンノースのみから成る三糖を2種類単離した(ミリマスで分子量や構造式を推定後、単糖分析した)。構成単糖における結合アノマー型はαであり、1Dや2D-NMRにより分岐型のマンノトリオースと決定した。もう一種類の糖鎖は、同様な解析から直鎖マンノトリオースと推定された。しかし、還元末端マンノースに対する結合部位が決定できず、NaBD_4を用いた還元・β-脱離反応により重水標識した試料を精製後、2D-NMRにより結合部位を明らかにした。後者は新規なO-結合型糖鎖であった。 2)Aspergillus niger 抽出液の UDP-Galf合成酵素とGalf転移酵素の活性は微弱であるため、菌体の培養条件を検討した。マントースやデンプンの添加で糖化酵素(分泌蛋白)の誘導とともに両酵素活性も上昇した。菌体抽出の際に失活が大きいことが認められたが、界面活性剤の共存で特にGalf転移酵素の安定化が認められた。各種クロマト操作で電気泳動的に単一ではないが、純度の高い標品を得た。アミノ酸配列解析を目指して両酵素の大量調製を行っており、得られた配列から遺伝子の単離を図りたい。
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