従来、天然界の光合成系には、中心金属としてMgを有する光合成色素であるクロロフィル(Chl)あるいはバクテリオクロロフィル(BChl)が不可欠であると考えられていた。しかし、好酸性好気性従属栄養性のAcidiphilium属細菌には、Znを持つバクテリオクロロフィル(Zn-BChl)が存在し正常に機能していることが発見された。本研究では、この新規光合成色素を持つ好酸性好気性細菌を酸性自然環境で検索し、分類学的検討を行うことを目的とした。 1.自然環境からのZn-BChlの直接検出: 自然界の酸性環境由来の試料(水、土壌、バイオマット)を対象に有機溶媒による光合成色素の直接抽出を追試したが、最終的に明確な結果は得られなかった。 2.自然環境におけるZn-BChlの遺伝子解析: 細菌の光合成遺伝子群の一つであるpuf遺伝子の自然界における分布をPCR法で検出したが、信頼できうる結果は得られなかった。 3.Acidiphilium属の基準菌株(Zn-BChlaとMg-BChlaを含む)を対象として、PCR法でpuf遺伝子を解析した結果、菌株によってPCR増幅(細胞からのDNA抽出効果も含めて)に著しい差異がみられたため、PCR条件を詳細に検討した。 4.好酸性好気性細菌の単離とZn-BChlの解析: 酸性鉱山水や酸性温泉など分離した好酸性好気性細菌の細胞内色素を分析した。その結果、A.rubrum型のZn-BChl含有菌と分類学的に未知のMg-BChl含有菌が分離されたが、大部分の分離菌はMg-BChl含有菌であった。
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