研究概要 |
キチンの効率的な分解や、キチン分解をベースにしたキチナーゼの生理機能に、キチナーゼを構成する活性ドメイン以外のドメインが重要な役割を果たしている。本研究はBacillus circulansWL-12のキチナーゼAlを構成する複数の機能ドメインのうち、活性ドメイン以外のドメイン、すなわちタイプIII様ドメインとキチン吸着ドメインの構造と機能の解明、そしてその応用開発を目的とする。キチナーゼAlは活性ドメイン,2つのフィプロネクチンタイプIII様ドメイン(以下タイプIIIドメインと省略する)、キチン吸着ドメインの3種、4つのドメインから構成されるキチナーゼである。 1. キチン吸着ドメインの構造と機能。 キチン吸着ドメインの構造と機能を解明する目的で、キチン吸着ドメインのpETシステムによる大量発現系をすでに構築済みである。これを用いてキチン吸着ドメインを大量番に生産し、精製した。当初、この精製キチン吸着ドメインを用いて、X線結晶構造解析によりその立体構造の解明を試みようとしたが、残念ながら良い結晶を得ることが出来なかった。そこでNMRによって立体構造解析を行うことを考え、奈良先端科学技術大学院大学の白川博士との共同研究を開始した。ごく最近、キチン吸着ドメインの立体構造解析に成功し、現在その構造と機能とを関連づけるための研究が進行中である。これはキチン吸着ドメインの立体構造解析を解明した世界最初の例である。 2. タイプIIIドメインの構造と機能。 これまでに大腸菌を用いてタイプIIIドメイン単独の発現系に成功している。当初このシステムによってタイプIIIドメインを大量に生産し、構造解析や生化学的な性質の解析を行おうと考えていた。しかしタイプIIIドメインが分解を受けやすいせいか、キチン吸着ドメインの場合と違って充分な生産量が得られなかった。そこで、発現系の改良を行い,最近充分な量のタイプIIIドメインが得られる発現系の構築に構築に成功した。現在、それを用いてタイプIIIドメインの生産と精製を行っている。来年度早々、NMRによる構造解析に着手する予定である。 すでに、活性ドメインの立体構造解析に成功しており、このタイプIIIドメインの構造解析によって、構成する全てのドメインの3次元構造をベースに、キチナーゼAlの機能を議論できることになる。
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