GGTは、古くからセリンプロテアーゼのようにアシル酵素中間体(GGTの場合はγ-グルタミル酵素中間体)形成を経て進行するとされており、小サブユニット内のOH基を持つアミノ酸残基が活性中心であろうとされてきた。しかし、化学修飾剤や部位特異的変異法による多くの研究にもかかわらず、活性中心残基を特定するに至っていなかった。筆者らはグルタミン酸アナログである新規なアフィニティーラベル化剤を用いて、これまでに1次構造の分かっているGGTおよび類似の酵素において完全に保存されている小サブユニットN末端のThr残基が活性中心であることを明らかにした。この化合物は酵素反応に伴って活性残基に不可逆的に結合し、安定なホスホン酸モノエステルを形成し、GGTを失活させた。アフィニティーラベルしたGGTと未修飾のGGTをそれぞれ逆相HPLCにより大サブユニットと小サブユニットに分離した後、イオンスプレー質量分析器で分析したところ、小サブユニットの質量数がラベル化剤1分子分大きくなっており、これまでの報告と同様、小サブユニットに活性中心があることが分かった。小サブユニットをリシルエンドペプチダーゼで切断後、LC-MSで分析したところ、小サブユニットのN末端ペプチド断片がラベルされていた。さらにこのペプチド断片をMS-MSによりペプチド結合部分で断片化させて解析したところ、ラベル化されたアミノ酸残基はN末端のThr-391であった。つまり、プロセッシングにより新たにN末端アミノ酸残基となった小サブユニットN末端のThr-391の側鎖の酸素原子が酵素反応の際の求核原子であり、γ-グルタミル酵素中間体を形成する際にγ-グルタミル化されることが明らかとなった。
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