研究概要 |
新機能β-アミラーゼの設計と開発を行うために、ダイズβ-アミラーゼとBacillus ceieusβ-アミラーゼの構造比較を行い、Bacills cercusβ-アミラーゼに特有のC末端デンプン粒吸着ドメインの1.95Å分解能での構造解析と至適pH-を微生物型に変換したダイズβ-アミラーゼの設計と構造解析を行った。【1.Bacillus creusβ-アミラーゼのC末端デンプン粒吸着下メインのX線結晶構造解析】 Bacills cereusβ-アミラーゼのC末端デンプン粒吸着ドメインの遺伝子を切り出し、大腸菌での発現系を構築した。得られた分子量約1万のデンプン粒吸着ドメインを精製し、結晶化を行った。硫安溶液中より得られた六方晶の結晶はP3@@S22@@E22@@S21@@E2の空間群に属し、その格子定数はa=b=60.4Å,c=65.0Å,α=β=90゚,γ=120゚であった。本結晶の回折データを1.95Å分解能まで本研究所設置のマルチワイヤーデテクターで収集し、分子置換法により構造を決定し、精密化を行った。本年度設置したデスクアレー装置は精密化計算の効率化のために不可欠やあった。最終モデルは90残基のアミノ酸を含みR-factorは16.9%であった。本モデルから本来2箇所に存在するはずのデンプン吸着部位のうち1箇所が数残基のアミノ酸変異により機能していないことが明らかになり、この部位の変異によりBaci11us ccrcusβ-アミラーゼのデンプン粒吸着・分解活性が強化できることが示された。 【2.ダイズβ-アミラーゼのpH依存性の改変とX線結晶構造解析】 ダイズβ-アミラーゼとBacillus cereusβ-アミラーゼの触媒ドメインの構造の詳細な比較から、両者の至適pHの差(それぞれ5.4と7.5)は触媒残基周辺のアミノ酸残基の相違によることが推定された。ダイズ酵素の場合、塩基触媒となるGlu380の側鎖にMet51,Asn340の側鎖が水素結合を形成し、Asn340の側鎖に更にGlu178の側鎖が水素結合する水素結合のネットワークが存在するが、対応するBacillus cereusβ-アミラーゼのGlu367にはこれらの水素結合は存在していない。そこで、ダイズ酵素のMet51,Asn340,Glu178をそれぞれ微生物型の残基であるThr,ThrおよびTyrに変異した変異酵素を作製し、精製変異酵素の性質を調べた結果それぞれ約1pH単位至適pHがアルカリ側に移動していることが明らかになった。現在これらの変異酵素をそれぞ孔結晶化している。得られた結晶について高分解能でのX線結晶構造解折を行う予定である。
|