新機能β-アミラーゼの設計と開発をドメイン構造の組み合わせにより行うために、Bacillus cereus β-アミラーゼのC末端に存在する澱粉吸着ドメインを大腸菌で単独発現し、その構造をX線結晶構造解析をによって決定した。また、ダイズ、オオムギ及びBacillus cereus起源のβ-アミラーゼのメインドメインの活性部位の構造比較を行い、至適pHを微生物型に変換したダイズβ-アミラーゼの変異体を作成し、そのX線結晶構造解析を行った。 【1.Bacillus cereus β-アミラーゼ及び澱粉粒吸着ドメインの構造決定と澱粉吸着能の強化】 Bacillus cereus β-アミラーゼの立体構造をX線結晶構造解析によって決定し、メインドメインとC末端澱粉吸着ドメインから成ることを明らかにした。C末端澱粉吸着ドメインを単独で大腸菌で発現し、精製結晶化した澱粉吸着ドメインの立体構造を1.95Å分解能で決定した。この立体構造を検討した結果、本来2箇所に存在するはずのデンプン吸着部位のうち1箇所がアミノ酸変異により機能していないことが明らかになり、この部位の変異によりBacillus cereus β-アミラーゼのデンプン粒吸着・分解活性が強化できることが示された。そこで、サイト2を形成する6残基のループ部分をグルコアミラーゼおよびシクロデキストリン合成酵素のデンプン粒吸着ドメインの配列に置換した変異体を作成し、それらの大腸菌での発現を検討した。 【2.ダイズおよびBacillus cereus β-アミラーゼの至適pHの改変とその変異体のX線結晶構造解析】 植物と微生物起源のβ-アミラーゼの活性部位の比較から触媒残基であるダイズ酵素のGlu380周辺の残基相違により至適pHが異なることが推定された。そこで、3種類のダイズβ-アミラーゼの変異体(M51T、E178Y、N340T)を作成し、その性質を検討した結果、至適pHは微生物型に移動した。これらの変異体とマルトースとの複合体のX線結晶構造解析を2Å分解能で行った結果、それぞれ、触媒残基の一つであるGlu380とMet51、Glu178、およびAsn340の側鎖との水素結合が予想通り切断されていた。以上の結果よりβ-アミラーゼの至適pHは触媒残基のpK値が側鎖間の水素結合により、制御されていることが明らかになった。
|