研究概要 |
分裂酵母のRasはフェロモンの情報伝達に関与し、ras1欠失株は有性生殖不能になる。これまでに高発現することによりrasをバイパスする遺伝子としてbyr2やbyr1が単離されてきている。今回、Rasの周辺や下流にはまだまだその調節に関わる新しい因子が存在すると考え、遺伝学的なアプローチをとった。 我々が単離した有性生殖が昂進しているsam変異の内2株はras1欠損に対して優性の性質を示す。sam変異のうち優性1株より、ゲノムライブラリーを構築し、ras1欠損株の胞子形成不能をバイパスできる遺伝子でsla1と呼ぶLaタンパク質のホモログ遺伝子を単離した。Laタンパク質はヒトの自己免疫疾患の抗原として知られ、RNAの安定化や翻訳制御に関与していると考えられる。 興味深いことにこのsla1はC末端コード領域を欠損しているときに活性を示し、その領域にはNLS(核移行配列)が存在していることが判明した。つまり核移行の有無が活性に大きく影響を及ぼすことを見いだした。さらにras欠損株の機能をバイパスする変異株として得られた劣性変異を相補する遺伝子として14-3-3のホモログをコードするrad25を得た。rad25の破壊株は胞子形成が昂進していること、逆にrad25を高発現させると胞子形成率の低下を示すことが判明した。もう1つの14-3-3のホモログとして知られるRad24についても同様の結果が得られた.Rad24,Rad25がByr2に結合すること、活性化状態のByr1はRad24,Rad25の影響を受けないことなどから分裂酵母では14-3-3がByr2を負に制御していることなどが分かった。
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