Enterobacter cloacaeのリン酸走化性に関わる遺伝子のクローニングを試みた。まず、pBR322を用いてE.cloacaeのゲノムライブラリーを作成した。次に4つの走化性トランスデューサー遺伝子が欠失している大腸菌変異株KO607を作成したゲノムライブラリーで形質転換した。ミニスウォームアッセイにより走化性が復帰した形質転換株をスクリーニングした結果、4株の形質転換株が選択された。それぞれの形質転換株からプラスミドを分離・精製してそのDNA挿入断片の制限酵素地図を作成したところ、それぞれ異なった断片であることがわかった。そこで、4断片のDNA塩基配列を決定して解析した結果、2つの断片に走化性トランスデューサー遺伝子と相同性を示す配列が見い出された。残りの2断片には、走化性トランスデューサー遺伝子様配列は見い出されず、かわりに膜輸送系の遺伝子と予想される配列が見い出された。これら断片を持つKO607の形質転換株がリン酸に対して走化性を示すか確認する予定である。次にPseudomonas aeruginosaの走化性遺伝子群のクローニングを行った。P.aeruginosaの走化性変異株を新たに2株(PC3株とPC4株)取得し、その変異を相補するDNA断片をP.aeruginosaゲノムの広宿主域コスミドライブラリーから選択した。PC3株の変異を相補する断片のDNA塩基配列を解析したところ、既に我々が単離・同定した走化性遺伝子cheYとcheZの下流の配列であることが判明した。さらに解析を進め、さらに3つの走化性遺伝子(cheA、cheB、cheW)を見い出した。PC4株の変異を相補する断片にはcheR遺伝子が存在した。それぞれの断片のゲノムマッピングを行った結果、cheRはcheYZABW遺伝子群から1.8Mbも離れて存在することが示された。
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