研究概要 |
平成11年度は、Pseudomonas aeruginosaのリン酸走化性トランスデューサーの同定を試み、それに成功した。走化性遺伝子cheRとcheBの変異によりリン酸走化性も失われることから,P.aeruginosaのリン酸走化性には走化性トランスデューサー(MCP)が開与していることが示唆されていた。そこで、原核生物のMCPで高度に保存されている44アミノ酸配列をプローブとしてP.aeru-ginosaのゲノム配列をtblastn解析し、26のmcp様遺伝子を見い出した。それら遺伝子の破壊株を作成しリン酸走化性を調べた結果、CtpHとCtpLの2MCPがリン酸MCPであることを明らかにした。このうち、CtpHは高濃度のリン酸の感知、CtpLは低濃度のリン酸の感知に関与していた。ctpL遺伝子の発現に対し、PhoUは負の制御、PhoBは正の制御を行っている。しかし、PhoU変異株ではCtpLが関与するリン酸走化性は見られない事から、PhoUはCtpLの機能に必須な因子であることを考察した。ctpH遺伝子は、リン酸欠乏条件でもリン酸十分条件でも構成的に発現する。しかし、CtpHが関与するリン酸走化性の誘導発現はPhoUにより負に制御されることから、その制御は転写後に行われていると示唆された。EcloacaeではCtpLに相当するMCPがあるものの、CtpLに相当するMCPがないため、必須因子としての機能しか見えてこないと推察できる。リン酸走化性を支える細胞内シグナル伝達系を構成する遺伝子はすでに全てクローニングされ解析されているので、リン酸MCPの同定で、リン酸走化性の全貌が明らかとなったと言える。
|