酢酸菌やPseudomonas属細菌などの好気的なグラム陰性細菌は、そのペリプラズム及び細胞質膜のペリプラズム側に種々のアルコールを酸化するキノプロテイン・アルコール脱水素酵素(ADH)を有している。本研究では、同じキノヘモプロテインADHでありながら、その局在と電子受容体が大きく異なるPseudomonas putidaのtype IIと酸酸菌のtype III ADHの関与するアルコール酸化系電子伝連鎖の構造や機能の違いを、特にをPseudomonas属細菌呼吸鎖の研究を中心にすえながら、比較・解析することを目的として研究をすすめ、平成10年度に以下の結果を得た。 1) ブタノールで培養したP.putidaのペリプラズムにtype II ADHとともに大量のブルー銅タンパクが生成されることを見いだした。そこで、その銅タンパクをtype II ADHとともに分離・精製し、その性質を検討した。スペクトル分析やN末アミノ酸分析等の結果から、この銅タンパクは新規なアズリンであることが明かとなった。 2) 次に、type II ADHとこの精製されたアズリンとの電子移動反応のキネテックス解析や蛍光変化を基にした結合解析を行った。その結果、両タンパク質はがなり速い速度で反応でき、しかもその反応は両者の疎水結合をベースに進行するが、非常に速やかなon-off反応で進行していることが明かとなった。 3) 酢酸菌ADHとシアン耐性電子伝達経路との関係を探るため、ADH欠損変異種酢酸菌にADHサブユニットIIをクローン化した菌株を作成し、それと野生型酢酸菌、ADH欠損変異種酢酸菌から細胞膜を調製し、それらのユビキノール酸化反応を検討した結果、ADH活性とシアン耐性ユビキノール酸化反応との間に相関関係があることが明かとなった。
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