[目的]マクロファージが産生する腫瘍懐死因子(TNF)は、76残基という極めて長い前駆領域を持った形で生合成され、分泌蛋白質でありながら、一旦活性を有する膜蛋白質として細胞表層に出現した後分泌されるという、極めて特異な分泌機構を有するが、そのプロセシング機構の詳細、ならびにその生理的意義については不明な点が多い。先に我々は、76残基からなるTNF前駆領域中の膜貫通領域の一部が、単独では典型的なシグナルペプチドとして機能すること、さらにこのシグナルペプチドの切断が、前駆領域中の細胞質領域により阻害されることにより、膜結合型TNFが生ずることを見い出した。本研究ではこの細胞質領域に存在する膜上トポロジー決定因子を明らかにすることを目的とした。 [方法、結果]糖鎖付加部位を成熟領域に導入したPro-TNFの前駆領域内細胞質領域について種々の欠失、置換変異体を作製しin vitro-小胞体膜通過系及びCOS細胞発現させ、糖鎖付加の有無から膜上トポロジーを検討した。その結果、Pro-TNFの細胞質領域には、細胞質領域の長さと膜貫通領域近傍の正荷電アミノ酸という2つのトポロジー決定因子が存在することが示された。さらに、これらPro-TNF変異体のCOS細胞における発現及び分泌を詳細に検討した結果、Pro-TNFの細胞質領域は、Pro-TNFの細胞での安定な発現および成熟型TNFの細胞からの分泌に重要な役割を担っていることが明らかになった。
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