これまでの研究から、プルラン分解性を有するThermoactinomyces vulgaris R-47のアミラーゼII(TVAII)の202番目以降のHKrDTというアミノ酸配列はプルランの認識に重要であり、とりわけHis202がプルラン、澱粉など高分子基質の認識に関わっていると考えられる。そこでTVAIIの202番目から206番目までのアミノ酸残基を系統的に変異させ、その酵素的性質を調べるとともに、ホモロジーモデリングにより立体構造を推定した。202-206番目のアミノ酸をそれぞれTrpに変異させると酵素活性、安定性共に大きく低下した。それぞれをAlaに変異させた酵素ではY204Aを除き比較的高い活性が保持されていることから、Trpのような大きな側鎖に変異させると適切な構造が取れなくなるものと考えられる。この中で、Y204W変異酵素のみはkcat値が大きく低下するもののプルランに対するKm値が減少し、ここの芳香環とサブサイト-1のグルコース残基との相互作用が強められたと推察される。またモデリングの結果から、His202はサブサイト-2のグルコース残基と疎水的相互作用することによって基質の認識に関わっていると思われる。これら変異酵素の実際の構造を知るため結晶化を試みたが、精製過程における挙動、結晶化条件などが野生型のものと大きく変化しており、まだ最適な条件を確定するには至っていない。今後はさらに条件を検討すると共に、分子表面に位置すると目されるアミノ酸残基を系統的に変異させ結晶化を図る予定である。
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