研究課題/領域番号 |
10660098
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
牧野 修 上智大学, 理工学部, 助教授 (70231587)
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研究分担者 |
田中 勲 北海道大学, 大学院・理学研究科, 教授 (70093052)
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キーワード | バクテリオファージ / DNA複製 / RNA結合蛋白質 / 発現調節 / 翻訳調節 / PCR / X線結晶解析 |
研究概要 |
枯草菌ファージφ29の必須遺伝子(genel)の産物(gp1)はφ29mRNAとの特異的な結合によって他のdna遺伝子の情報発現を抑制している。本研究はこのRNA結合蛋白質、gp1、の構造と機能を解明することを目的としている。<gp1の精製法の改良>野生型gp1のカルボキシル末端にhis-tagを付加し、さらにgenel内に存在するマイナーなSD様配列を改変した。その結果、より精製度の高いgp1をはるかに迅速、かつ多量に得ることが可能となった。 <gp1の結晶化の試み>以上のようにして、gp1を大量に精製し、ハンギングドロップ法によって結晶化を試みたが、現在のところ成功には至っていない。その原因を探るためDLSを用いた検討を行ったところ、20℃では多分散を示したが、30℃では単分散となった。このため、温度を含めた結晶化条件の再検討を行う方針である。 <変異型gp1の単離>PCRを用いてgenelの内部に突然変異を導入した。当初予定したベーターガラクトシダーゼを利用した翻訳抑制を調べる系では変異株の効率的な選択が不可能だったため、野生型gp1が大腸菌の生育を阻害する現象を利用する事とした。この生育阻害の理由は未知であるが、コロニーサイズを指標とした選択の結果、最終的に37クローンの1アミノ酸置換変異株を得ることが出来た。また変異部位はgp1の85アミノ酸のほぼ全域に分布していた。これらの変異型gp1を精製し、RNA結合能の変化や結晶化の可能性について検討する予定である。 <gp1結合領域について>gp1は自らの上流にあるdna遺伝子の発現を抑制する。そこでまず、gp1がこれらの標的遺伝子の翻訳開始領域に結合することを想定して実験を開始した。約5500塩基の領域をおよそ600塩基ずつクローニングして得た18種類のmRNAと精製したgp1を用いた実験の結果、gp1は予想に反して翻訳開始領域から2000塩基ほど下流の領域に結合した。現在、gp1が認識、結合するRNAの塩基配列を決定する実験を開始している。
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