枯草菌ファージφ29のgene1(dna遺伝子の一つ)の産物gp1はmRNAとの特異的な結合により他のφ29dna遺伝子群の翻訳を抑制する。本研究はこのRNA結合蛋白質gp1の構造と機能の解析を目的とした。 <結晶化の試み>野生型のgp1にHis-tagを付加し、さらにマイナーなSD様配列を改変した結果、結晶化に必要とされる大量のgp1を精製度の高い形で迅速に得ることが出来た。精製gp1の可溶化の為には界面活性剤CHAPS(1%)が必要だった。このgp1を用いて結晶化のスクリーニングを行ったが、現在の所成功には至っていない。結晶の形成にHis-tagが悪影響を及ぼした可能性を考え、His-tagとgp1の会合状態の均一性に問題があった可能性を考え、動的光散乱を用いた検討を行った。その結果gp1の分散はCHAPSの濃度及び温度に大きく依存し、一般的な結晶化の温度である20℃で10mg/mlのgp1を単分散にする為には2%以上のCHAPSが必要である事が分かった。またRNA結合アッセイにおいても1〜2%のCHAPSが特異的なRNA結合性に必要だった。今後、His-tagを除いたgp1を用い、界面活性剤を含む形での結晶化のスクリーニングをする予定である。 <変位型gp1の単離>PCRを用いてgene1のコーディングフレームにランダムな突然変異を導入した。これらをクローン化して塩基配列を決定した結果、37クローンの1アミノ酸置換変異株が得られた。変位部位はgp1のほぼ全域に分布しており今後、RNA結合ドメインの検討に利用する予定である。 <gp1の結合領域>gp1は標的mRNAの下流域に結合する事が分かった。この事はgp1が原核生物に於いてこれまで知られていないメカニズムで翻訳を抑制することを強く示唆した。従ってgp1の機能と構造のさらなる解明が重要と考えられる。
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