研究概要 |
高等植物における活性酸素消去系の鍵酵素であるアスコルビン酸ペルオキシダーゼ(APX)アイソザイムの発現調節機構および生理的意義を明らかにすることを目的として以下の2つの項目について検討を行った。 1)チラコイド型APX(tAPX)およびストロマ型(sAPX)は同一の遺伝子から3'末端の選択的スプライシングにより生成している。RT-PCRによる解析の結果、ApxIIから分子量の異なる4種類のmRNA(tAPX-I,sAPX-I,-II,-III)が生成していることが明らかになった。またそれらはポリゾーム上で検出されたことから、すべてタンパク質合成に機能していることが示された。S1ヌクレアーゼアッセイの結果から、播種4週間後のホウレンソウ葉には、sAPX-I,-II,-IIIおよびtAPX-Iがそれぞれ21:5:32:42の割合で存在することが明らかになり、tAPX:sAPXとしてのmRNAの割合は両酵素のタンパク質および活性レベルとはほぼ一致して1:1となった。このことから、高等植物における葉緑体型APXアイソザイムの発現調節は選択的スプライシングに依存していることが明らかになった。 2)ホウレンソウに存在するAPXアイソザイム(sAPX,tAPX,ミクロボディ型;mAPX,細胞質型;cAPX)の種々の環境ストレスに対する応答機構を解析した。その結果、cAPXのみが強光およびパラコートストレスにより転写レベルで発現誘導されたが、他のアイソザイムは応答性を示さなかった。そこで、強光ストレスについて詳細に検討した結果、cAPXの発現は転写および活性レベルで経時的に上昇していた。一方、mAPXでは各レベルで有意な変動が認められなかったが、sAPXおよびtAPXは転写レベルおよびタンパク質レベルが変化していないのに反し、活性レベルが著しく減少していた。また、強光条件下においてH_2O_2量の一時的な上昇およびアスコルビン酸の酸化還元状態の変化が認められた。
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