微生物の生産する中枢神経細胞保護物質に関する研究

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10660104
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 新家 一男 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助手 (20251481)
• キーワード: 脳虚血疾患 / グルタミン酸毒性 / カイニン酸 / AMPA / NMDA / kaitocephalin / ラット海馬神経細胞

研究概要

ニワトリ胚終脳神経細胞におけるカイニン酸毒性抑制を指標に微生物代謝産物について神経細胞保護物質のスクリーニングをした結果、Eupenicillium sheariiと同定したカビから新規グルタミン酸レセプターアンタゴニストkaitocephalinを発見した。本化合物は、細胞毒性を全く示すことなく、従来のアンタゴニストと同等、あるいはそれ以上強い活性でカイニン酸およびAMPAによる神経細胞死を抑制した。
本化合物はレセプターバインディングアッセイの結果、AMPAレセプター以外にもNMDAレセプターに対しても強い結合阻害活性を示した。そこで本化合物がNMDA毒性に対しても有効であるかを検討するため、ラット海馬神経細胞におけるNMDA毒性抑制試験を行った。その結果、kaitocephalinはNMDAレセプターのうちアゴニスト結合サイトに対するアンタゴニストであるが、他のNMDAレセプターアゴニストバインディングサイトのアンタゴニストと比較すると最も強くラット海馬神経細胞を保護し、その強さはMg^<2+>バインディングサイトのアンタゴニストであるMK-801と同等のものであった。またグルコースおよび酸素を除去したin vitro ischemia実験においても、kaitocephalinはラット海馬神経細胞を保護した。
またkaitocephalinには5個所に不斉炭素が存在するが、より選択的、強力な誘導体を調製する上でこれらの立体の決定が必須である。本年度はkaitocephalinを化学修することにより、相対配置を決定し更に一個所の絶対配置を決定することにより全絶対配置を決定した。今後はこれらの立体を考慮し誘導体の調製、および動物レベルでの生物活性を含めた詳細な生物活性について研究する予定である。

研究成果

• [文献書誌] Noriyuki Yamashita: "6-Hydrtxytetnangulal,a new CPP32 protease inducer produced by Streptomyces sp." The Jouranl of Antibiotics. 51. 79-81 (1998)
• [文献書誌] Toshihiro Kunigami: "A novel neuronal cellprotecting substance,aestivophoenin C,produced by Streptomyces purpecfuscus" The Journal of Antibiotics. 51. 880-882 (1998)
• [文献書誌] Noriyuki Yamashita: "New ravidomycin analogues,FE35A and FE35B,apoptosis inducers produced by Streptomyces rochei" The Journal of Antibiotics. 51. 1105-1108 (1998)
• [文献書誌] 新家一男: "BIACOREを用いた未知物質のスクリーニング・脱アイソトープ実験プロトコール" 秀潤社, 13 (1998)
• [文献書誌] 新家一男: "イノシトールトリスリン酸レセプターに作用する物質のスクリーニング" シュプリンガー・フェアラーク, 7 (1998)