研究概要 |
ダイズ根粒菌Bradyrhizobium elkaniiのトランスポゾンTn5挿入IAA低生産性変異株を12株取得し、それぞれの変異株のインドール-3-酢酸(IAA)生産量をサルコフスキー試薬による呈色反応やGC-SIM法により定量したところ、変異株のIAA生産量は野生株の1/4〜1/20にまで低下していることが示された。B.elkaniiは主にインドールピルビン酸経路でIAA生産を行っていることが知られている。そこで、各変異株におけるIAA生合成中間体の変換を休止菌体反応で調べたところ、得られた全ての変異株においてインドールピルビン酸からインドール-3-アセトアルデヒドへの変換段階、すなわちインドールピルビン酸デカルボキシラーゼ(IPDC)触媒段階に変異が生じていることが示唆された。各変異株におけるTn5周辺の塩基配列を部分的に決定したところ、殆どの変異株は、NADH-キノンオキシドレダクターゼ、ポリ-β-ヒドロキシブチレート合成酵素など生体内代謝に関与していると考えられる酵素遺伝子にTn5が挿入されており、IPDC遺伝子にTn5が挿入されたものは見いだされなかった。Tn5挿入による極性効果によりIAA生合成が抑制された可能性を考慮し、Tn5挿入部位周辺のより広い領域について塩基配列の決定を行うことも必要と考えられる。現在、IPDCの精製も並行して行っており、単離に成功すればアミノ酸配列の情報を基に遺伝子のクローニングを行う予定である。上記IAA低生産性変異株を宿主植物の一つであるサイラトロに接種し野生株と根粒形成能の比較を行ったところ、変異株を接種した場合は,野生株を接種した場合に比べ根粒形成数が10-60%に減少し、IAAが根粒形成に関与している可能性があらためて示された。
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