自己の糖鎖が抗原として認識されることで発症する自己免疫性神経障害が知られている。本研究では、その発症メカニズム解明の鍵分子である複合糖質の合成とその機能の解析に取り組んだ。標的分子の一種は複雑な構造を有する生体超微量ガングリオシドGalNAc-GD1a、Lacto-Ganglio-1とLacto-Ganglio-2である。これらは生体に豊富に存在するガングリオシドGM2と共通のエピトープを包含し、抗GM2抗体との交差反応で障害され、その機能が阻害される。本研究では3種のガングリオシドの全合成に成功し、現在機能を解析している。 もう一種の鍵物質は、Campylobacter jejuni(C.jejuni)が有するリポ多糖(LPS)で、特異な構造として非還元末端側にガングリオシド様糖鎖を持つ。この菌の感染により、LPS中のガングリオシド様糖鎖に対する抗体が生じ、それが生体中のガングリオシドを障害する機構が提案されている。本物質はガングリオシド様糖鎖部分、コア糖部分、リピドAの3つの部分から成り、本研究ではLPSに特異的に含まれるヘプトースの効率的合成を達成し、それをユニットとするコア糖分の合成に成功した。更にガングリオシド様部分としてGD3相当糖鎖を縮合し、目的物質の部分構造を合成した。
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