研究概要 |
ユーカリに含まれるフロログルシノール類のうち,シデロキシロナールAおよびグランジナールは海洋付着生物に対して強い付着忌避活性を有しているため,構造と忌避活性の関係が明らかになればモデル化合物を創製でき,新しい防汚剤の開発が可能になると考えられる.本年,シデロキシロナールBおよびCの合成が報告された. (Tatsuta et al.,Tetrahedron Lett.,40(1999),1925-1928)また,ユーカリ (メリオドーラ種)からシデロキシロナールCが単離された.(Eshler and Foley,Aust.J.Chem.,52,157-158(1999))これらの研究は,構造と活性の関係を知る上で非常に興味のある結果であり,双方の研究者から,これら異性体を提供してもらい,シデロキシロナールAと活性を比較するため,現在ムラサキイガイに対する付着忌避活性試験を行っている.グランディナールの合成は,グランディノールと他のフロログルシノールのディールス・アルダー反応による合成を考えているが,本年はグランディノールの合成が終わり,相手の化合物の合成を進めている.次に,フロログルシノール類の分子軌道計算による構造活性相関の解析したところ,強い付着忌避活性を示したシデロキシロナールAに立体構造が近いほど活性が強く,活性とシデロキシロナールAの分子構造に近いかどうかとの関係に直線関係が得られ,これらの成果を論文として発表した.(Terada et al.,Biosci.Biotech.and Biochem.,63,276-280(1999))以上のように,平成10年度は初期の目的が達成できたので,来年度は,グランディナールの合成を行い,構造と活性の関係をさらに明らかとし,モデル化合物の創製を進めていく予定である.
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