蚕休眠ホルモン側鎖官能基が活性発現に果す役割の解析と強活性物質の創製

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 10660109
• 研究機関: 三重大学
• 研究代表者: 今井 邦雄 三重大学, 生物資源学部, 教授 (80109313)
• キーワード: カイコ休眠ホルモン / パルミトイルペプチド / 親油性蛋白質 / 休眠誘導能 / 新投薬法 / カイコ

研究概要

昨年度の研究では、パルミチン酸で修飾したトリペプチドアミド(C16-PRL-NH_2)が休眠卵数を大幅に増加させることを見いだしている。この結果に基づき、本年度は修飾脂肪酸の炭素数が上記活性増強に与える影響について調べることからはじめた。
炭素数2から28までの脂肪酸で修飾したPRL-NH_2を調製し、生物検定を行った結果、炭素鎖が短い場合や長すぎる場合には、大きな効果が得られないが、炭素数16と18の場合に最大の活性増強能が見られることを明らかにできた。そこで、C16-PRL-NH_2を使用して、各種の蛋白質や多糖などの添加物を共存させ、活性を一層強める新投薬法の開発を図ったが、好ましい結果は得られなかった。これに対し、過去の研究では、雄蚕蛾頭部の有機溶媒抽出物から休眠ホルモンの活性発現に対する天然協力剤として新規親油性蛋白質を単離している。残念ながら、この協力剤は天然から大量に得られないため、新投薬法開発の目的には使用し難かった。そこで、別種の節足動物であるアマエビ殻の有機溶媒抽出物中に類似機能を示す蛋白質を検索した。その結果、休眠ホルモンの活性を10倍程度増強する新親油性蛋白質を単離構造決定できた。この蛋白質の収量は比較的良好であるため、今後、この蛋白質を添加物として用い、トリペプチドアミド脂肪酸誘導体や休眠ホルモン類縁体の活性を増強する新投薬法の開発を図る予定である。
以上の結果、本年度は活性発現最小単位トリペプチドアミドをパルミチン酸かステアリン酸で修飾した誘導体が強活性を示すことを明らかにし、その活性をさらに増強する投薬法を開発する糸口を見いだすことができた。

研究成果

• [文献書誌] Yukihiro Sato: "Phe-X-Pro-Arg-Leu-NH2 peptide producing cells in the central nervous system of the silkworm, Bombyx mori."Journal of Insect Physiology. 44. 333-342 (1998)
• [文献書誌] Kunihiro Shiomi: "A hydrophobic peptide (VAP-peptide) of the silkworm, Bombyx mori : a unique role for adult activity proposed from gene expression and production at the terminal phase of metamorphosis"J.Insect Biochem.Mol.Biol.. 28. 671-679 (1998)
• [文献書誌] Kunio Imai: "Minimum structure of diapause hormone required for biological activity"Biosci.Biotechnol.Biochem.. 62(10). 1875-1879 (1998)
• [文献書誌] K.Shiomi: "A hydrophobic peptide (VAP-peptide) of the silkworm, Bombyx mori : structure, expression and an enhancing function of diapause hormone activity."Insect Biochemistry and Molecular Biology. 28. 75-82 (1998)
• [文献書誌] K.Shiomi: "Structure of the VAP-peptide (BM ACP-6.7) gene in the silkworm, Bombyx mori and a possible regulation of its expression by BmFTZ-F1."Insect Biochemistry and Molecular Biology. 30. 119-125 (2000)
• [文献書誌] H.BABA: "Rapid degradation of silkworm diapause hormone by trypsin and its suppression by VAP-map, a synthetic analog of a cuticular peptide of silkworm, Bm ACP-6.7 (VAP-peptide)"Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry. (in printing).
• [文献書誌] K.SUZUKI: "Isolation and characterization of a novel lipophilic protein, Pb CP-12.7, from the shell of pink shrimp, Pandalus borealis"Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry. (in printing).
• [文献書誌] 今井邦雄: "蚕休眠ホルモンの化学-精製・単離・構造決定を中心とした研究の流れ"三重大学生物資源学部紀要. 21. 87-100 (1999)