多彩な花色のほとんどを担う花色素アントシアニンは、in vitroでリトマスのようにpHに応じて連続的に赤から青色まで色が変化する。申請者らは、西洋アサガオがツボミでは赤紫色で開花に伴い空色へと変化する現象に着目し、細胞内微小pH電極により生きた花弁液胞pHを直接精密測定した。そして、この花色変化がこれが液胞pHの上昇によるためであることを解明した。液胞pHが、開花にともない上昇する現象は、花色変異の機能解明のみならず、植物生理学上も極めて興味深いものである。本研究は、アサガオ花弁のpH上昇機構の解明を目的に行った。 1.細胞内微小pH電極の作成 細胞内微小pH電極法において、現在問題となっているのは、応答性のよい植物細胞用電極作成方法の確立である。電極の作成時における溶融温度、先端部に詰めるニトロセルロース濃度、プロトンイオノフォアの添加量などさまざまな条件を検討した。現在、作成した電極のうち約50%が応答するようになった。 2.アサガオ花弁液胞の測定 赤色アサガオ(Pharbitis nil cv.Scarlet O'hara)花弁の表層細胞の着色液胞のpH測定を実施した。赤色液胞pHは約6.1であり、空色西洋アサガオの開花時の液胞pHである7.6よりもかなり低いことがわかった。
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